犬が涙を流すのは“悲しい”からではない?涙から紐解く犬の健康状態とは

皆様は愛犬が涙を流した姿を見たことがありますか?
例えば外出先から帰宅し、愛犬の様子を見ると、涙を流していたような涙やけの跡を発見した際に、長時間待たせてしまい寂しい思いをさせ、悲しませてしまったのではないか?とと思い至ったことはありませんか?

もしかしたら、その涙は別の理由で流していたのかもしれません。
今回は、犬はなぜ涙を流すのか。人間との違いについても交えながら紹介をしていきます。

目次
1.犬は涙を流すのか
2.犬の涙の理由
3.涙が止まらない時は要注意?

犬は涙を流すのか

犬にもほとんどの哺乳類と同様に、涙を流すための器官があります。そのため、生物学的には涙を流すことができます
涙を流す原理をもう少し説明すると、まぶたの上にある『主涙腺(しゅるいせん)』と、鼻側の目頭にある『瞬膜(しゅんまく)』という器官で涙は生されます。
主涙腺で生成された涙は、目の表面を薄く覆いながら目元まで流れていき、目と鼻をつなぐ目側の入り口である『涙点(るいてん)』という小さな穴から、排水管である『鼻涙管(びるいかん)』を通過し鼻へ流れます。このような形で、涙は目や鼻から流れ出ます。

余談ですが、涙は動物が海から陸地に進出した際に、剥き出しとなった角膜の表面を保護するために分泌されるようになった、と言われております。
このように物理的には涙を流すことは分かりましたが、人間同様、感情の変動により犬も涙を流すのでしょうか。犬が涙を流す理由についてより詳しく解説していきます。

犬の涙の理由


犬も人間同様、喜び、恐怖、悲しみ、その他様々な感情を抱きます。ただ大きく異なるのは、涙を流す理由が『感情』の影響を受けている訳でない、という点です。
涙の主な役割としては、眼球の表面に涙膜(るいまく)という涙の膜を形成し、外部刺激から角膜を保護する役割や、栄養の供給、殺菌作用、異物が入った際に洗い流す、など、目を健康な状態に維持するための保護の役割が大きいです。

涙を流す理由としては、そういった過剰な外部刺激から目を守ろうとする防衛反応であったり、適切な形で排出できず溢れ出してしまう、といったケースが考えられます。
代表的な例をいくつか列挙します。

・ゴミなどが目に入っている
ホコリや空気中に飛散したゴミが目に入り涙を流すケースもあります。この場合の涙は一時的なものなはずですので、長期間症状が見られる場合は違う理由があるかもしれません。

・アレルギー反応
花粉、食材、煙、フケ、ほこりなど、何かに対して過敏な反応をしている場合、アレルギー反応の可能性もあります。アレルギーは突如発生するケースが多く、ある時期を境に涙を流すようになった、または一定の時期になると涙を流す、といった症状の場合は該当する可能性があります。

・鼻涙管の詰まり
目と鼻をつなぐ涙を排泄する器官である鼻涙管が先天的に細くなっていたり、 鼻涙管の炎症により鼻涙管自体が詰まってしまうことで、正常に涙を排出できずに目から溢れてくる症状です。
鼻が短く目が前面にあるマルチーズ、ペキニーズ、シーズーなどは顔の構造的に発症することが多いと言われています。

・感染症
液体が黄色または血まみれの場合、感染症の症状である可能性があります。その場合は他にも、炎症がある、腫れている、などの症状が見受けられますので、病院での診察をお勧めします。

・角膜に傷ついた
目をぶつけてしまったり、間違えて引っ掻いたりして目の角膜を傷つけてしまうと、涙が溢れ出ることがあります。
軽症な場合は点眼薬で完治することもあれば、重症な場合だと眼球摘出もしなければならないなど、愛犬の今後に大きな支障があります。
涙が継続的に出る、目を気にして掻こうとする、いつもよりまばたきが多い、目の表面(角膜)に白く斑点が見える、目の膜が剥がれているように見える、など普段と異なる仕草や状態が見られた場合は、こちらもすぐに病院に行きましょう。

涙が止まらない時は要注意?

涙の産生量と排出量のバランスが取れず、涙が溢れて止まらず、目元が涙やけをしてしまった。このような症状を、流涙症(りゅうるいしょう)と呼びます。前項で記載した涙を流す理由の中にも、この症状に該当するようなケースは多いです。
原因を分けると、涙の過剰分泌と涙の排水システムの詰まりの二つに分類分けされます。

・涙の過剰分泌
外部刺激も含む何かしらの影響で、涙の供給量が増え過剰分泌している
 ・異物混入
 ・逆まつげになっており、継続的に眼球に刺激がある
 ・結膜炎、角膜炎といったウイルス性の炎症
 ・角膜が傷ついている

・涙の排水システムの詰まり
前項で記載の鼻涙管の詰まりなどがこのケースに該当します。犬の鼻のつけ根付近を指でマッサージすることで改善されるケースもあります1が、改善が見込めない場合は、全身麻酔を行い、チューブ(カテーテル)を体内に入れ、詰まっている鼻涙管へ生理食塩水などで老廃物を流し改善を試みる治療があります。

まとめ

犬が涙を流す理由は、人間のような感情的な理由ではなく、目の健康状態を維持するためでした。もし愛犬が涙を流している場合は、状況を経過観察しつつ、必要に応じて通院することをお勧めします。
犬も感情がある生き物ですので、涙を流す『泣く』ではなく、『鳴き声』で自分の思いを伝えようとします。何故鳴いているのかを理解し適切なコミュニケーションをとっていけたらいいですね。

参考にした記事・文献参考

AMERICAN KENNEL CLUB Can Dogs Cry? Do Dogs Cry Tears?
https://www.akc.org/expert-advice/health/do-dogs-cry/**

千寿製薬株式会社 犬のドライアイについて
https://www.senju.co.jp/animal/owner/dryeye.html

ペットサポートのPS保険
犬の流涙症の症状と原因、治療法について
https://cutt.ly/xwy7MN3W

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流涙症
https://cutt.ly/Qwy71MRq