犬とペンギンは似た足の構造?犬が寒さに強い理由と、冬に気をつけるべき病気を解説

『雪が降ると、犬は喜んで庭を駆け回り、猫はこたつで丸くなる』といった童話の歌詞から、『犬=寒さに強い』といった印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
一方で、素足で雪道を歩いていることを想像すると、なんだか寒そう、凍傷にならないのかな?と不安になりますよね。

今回は、雪や寒さにまつわる、病気や怪我、健康被害について解説をしていきます。

犬は凍傷にならないの?

そもそも凍傷とは、どのような状態かご存知でしょうか。

凍傷とは『皮膚が極端な低温にさらされ、血液循環が悪くなり組織が異常をきたす』症状を指します。
つまりは寒さにより体の末端まで血が行き届かなくなることで起きるのですね。

では雪の中、素足で歩いている犬の足は、凍傷になる可能性はあるのでしょうか。
そう不安になられる方も多いかとは思いますが、実際のところ、発症する可能性は低いです。

その理由は『肉球と血液の流れの構造』にありました。

実は、犬の血液構造は人間とは異なり、心臓から流れ出た血液を肉球に送る”動脈”に、心臓に血液を戻す役割の”静脈”が網目上に巻き付くように配置されています。
心臓から送り出された血液は、本来は体温にほど近い温度で体を流れ始めます。
しかし、網目上に張り巡らせた静脈が、その温度を奪い、足先に到達する頃には5~6度ほどまでに下がります。(逆に冷えた静脈は動脈に温められ、心臓へと戻っていきます。)

ですので、冷たい雪に触れてたとしても、そもそも足先は体温が冷たい状態なので、急激な体温低下になりにくく凍傷を発症する可能性も低い、ということになります。

この仕組みを『対向流熱交換システム』といい、寒い地域に生息するペンギンやシロクマも同様の機能を有しております。
補足ですが、ネコはこの機能は発達しておらず、故に寒いのが苦手と言われる所以なのかもしれませんね。

とはいえど、あくまで凍傷に『なりにくい』ということですので、長時間の散歩は控えるようにしましょう。

他に気をつけるべき怪我や病気は?

先程は足先の凍傷へのリスクについて述べましたが、他にも気をつけるべき怪我や病気はあるのでしょうか。

耳や尻尾の霜焼け・凍傷

足は凍傷になり辛い、という話をしましたが、耳の先端などの他の末端部位は血液の循環が悪くなりがちです。
脱毛や瘡蓋(かさぶた)が見受けられたら、早めに病院に受診しましょう。
ミニチュアピンシャーやイタリアン・グレーハウンド、ミニチュア・ダックスフントなど、耳が大きく短毛の犬種、または耳が薄い犬などが発症しやすいです。

低体温症

その名の通り、体温が下がり過ぎてしまい、体のあらゆる機能が低下する状態を指します。
震えや意識の低下、呼吸や心拍数の遅下がりなどが初期症状です。特に体が小さい犬や、体格の細い犬、高齢犬は注意が必要です。

融雪剤や凍結防止剤の薬害

実は最も恐ろしいのが、これらの薬害です。
積雪地帯などでは、道路に融雪剤や凍結防止剤などが散布していることが往々にしてあり、
そして積もった雪に成分が解けこみ、悪影響を及ぼす場合があります。

例えば道端にある雪を誤って食べてしまうと、中毒症状を起こし、下痢や嘔吐などを発症することがあります。
また肌にも刺激が強く、触れた肉球が赤くただれてしまい、皮膚炎になる場合もあるため注意が必要です。

防止するにはどのようにしたらいい?

融雪剤や凍結防止剤の薬害影響を防止するには、どのような対応が必要なのでしょうか。

雪を食べさせない

拾い食いは、雪だけではなくあらゆる健康リスクが伴いますので、もし愛犬に兆候が見られるようなら、やめさせるよう教育をしましょう。
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足をきちんと洗う

融雪剤が、足に付着している可能性があるので、散歩後はきちんと洗い流してましょう。
その際に皮膚に異常がないかも確認し、赤くただれているようなケースが見受けられる場合はすぐに病院に行きましょう。

ドッグシューズを履く

ドッグシューズを履いて散歩に行くこともおすすめです。
目的は、”寒さ対策”よりも”保護”なので、柔らかくて軽い、愛犬が違和感を感じないような商品がおすすめです。

まとめ

本来、犬は寒さに強い生き物です。
ですが、雪の中に含まれている薬剤への対処は、犬自身ではもちろんできませんので、飼い主様がケアや予防をしてあげることが大切です。

参考記事・文献

マルホ皮膚科セミナー
『第40回日本小児皮膚科学会② 教育講演2 なぜペンギンはしもやけにならないの?〜生物環境適応戦略から考える皮膚の発生と多様性』
久保 亮治
https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-170302.pdf

犬の足蹠血管構造の機能解剖学: 血管腐食円柱の走査型電子顕微鏡観察
二宮広義、 秋山恵美、 島崎かなえ、 小栗温子、 實本桃子、 福山隆明
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-3164.2011.00976.x/abstract;jsessionid=AF93F707A89346AC1615A2DC566F3EC8.d02t04

TBS NEWS DOG
冬の犬の散歩、道路の雪を食べてはダメ…獣医師が警鐘 「融雪剤」成分で中毒症状、肉球に「皮膚炎」の可能性 寒さにストレス感じる犬も
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/913968