愛犬の不調、その原因は“腸内環境”にあるかも?流行りの”犬の腸活”について解説

最近、犬の”腸活”や”プロバイオティクス”、”腸内フローラ”という言葉を耳にしたことはありませんか?
特にプロバイオティクスや腸内フローラは、フードやおやつなどに記載されているのを見かけるかもしれません。ですがその意味をきちんと理解していますでしょうか。

もちろん摂取して悪いものではありません。ただ、なぜそれが必要なのか、どんな役割を担うのかをきちんと把握することで、与える理由や良い商品の見分け方にも繋がります。

今回は、話題の腸活について説明をしていきます。

腸が行っている重要な役割とは

腸活を説明する前に、まずは腸について解説していきます。
腸は大腸と小腸の2つに分かれており、2つまとめて”腸”と表現されます。体内の臓器の中でも特に重要な役割を担っており、“第二の脳”とも呼ばれています。
その所以は、腸には脳に次ぐ神経細胞が存在しており、これは脊髄や末梢神経系より多く、脳とは独立して自らの判断で機能することができるからです。

より具体的に、腸の大きな役割について3つ紹介します。

食物を消化、栄養素を吸収
食べ物の栄養素を、様々な形に分解(消化)し、それらを腸内で吸収します。消化・吸収された栄養素は血液に流れ、各筋肉や臓器に栄養素が行き渡っていきます。これは腸の中でも、小腸が役割を担っています。

・便を作る
消化・吸収された食べ物の残りは、身体の栄養素にならない残りカスです。
これらはドロっとした液状なのですが、大腸内で水分を吸収し固形の便を生成し、排出を促します。

・ウイルスの排除
食べ物や空気から侵入した菌やウイルスは、体内を巡り腸に辿り着きます。
腸は、それらの侵入を察知し、排除しようとする動きを、脳からの指令ではなく腸自らが判断し行っています。
この、ウイルス侵入の察知〜排除までを医学用語では、”免疫”と呼び、免疫機能を持つ細胞を”免疫細胞”と呼びます。
身体の中にいる免疫細胞の約半数は腸内に潜んでいるとも言われており、健康維持において重要な臓器となります。

これらの腸の機能や役割は、人間も犬も変わりません。
人間の腸内には1000種以上、100兆個以上の細菌が生息しています。一方で、犬の腸内に生息している腸内細菌の正確な数はまだ分かっていないようです。
しかし一説では、腸内細菌の密度は、人間より犬の方が多いという研究結果もあり、いずれにしても、とてつもない数の腸内細菌が存在していることになります。

最近流行っている腸活とは

腸活とは、腸内環境に生息している腸内細菌のバランスを適切に保つための、食事や運動を行うことを指します。
腸内細菌は”善玉菌” ”悪玉菌” ”日和見菌(ひよりみきん)” の3種類に分かれています。

・善玉菌
腸の働きを正常に行うために必要な細菌です。
消化や免疫機能のサポート、栄養素の生成など重要な役割を担います。
代表的な善玉菌としては、ビフィズス菌や乳酸菌があります。

・悪玉菌
病原性を持つ細菌であり、腸内において健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
大腸菌O157やサルモネラ菌などが代表的な悪玉菌として挙げられ、有害な毒素を生成し腸内の組織を損傷させたり、炎症、腸内感染症や下痢などの病気の原因となることがあります。

・日和見菌
日和見菌とは腸内で一番多く存在する細菌で、日和見菌そのものは健康に影響を与えません。
しかし、腸内のバランスが善玉菌・悪玉菌のどちらかが優勢になると、優勢なほうに加担するという特徴を持っています。

冒頭に、腸活において腸内細菌のバランスを整える重要性を記載しているのは、まさにこの”日和見菌”を味方につけたいからなのです。

例えば善玉菌が優勢な場合、日和見菌は善玉菌の味方となり、栄養素の生成や消化のサポートを手伝い、逆に悪玉菌が優勢な場合、発ガン物質の生産、腐敗ガスの生成など悪玉菌の味方となり働きます。
一般的にいい腸内環境の基準は、善玉菌 20%、悪玉菌 10%、日和見菌 70% と言われており、そしてこの最適割合は人間も犬も同様です。
(悪玉菌が全くいなくなると、善玉菌もサボるかのように活動しなくなってしまうので、一定の割合で悪玉菌も必要だと言われています。)

腸内細菌のバランスを善玉菌有利の状態にし、健康に良い影響を与える為に活動することを腸活と呼びます。

ちなみに、腸活とセットでよく聞くワードである『プロバイオティクス』とは、本来ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の総称です。
現在では、善玉菌を利用した様々な食品名やサプリメント名の表示に使用されるようにもなっており、腸活そのものをそう呼ぶと認識されている方も多いようです。

愛犬の腸内環境は大丈夫?

実際に、愛犬の腸内細菌のバランスはどうなんだろうと気になる方もおりますよね。
主に、便の状況を目視で観察する方法と、便を採取し検査する方法などで把握できます。

・便の観察
犬の便は、適度な固さで茶色く、バナナのような1本の形で排出されるのが理想の形となります。
水を含んだ下痢のような糞便だと、腸内細菌の活動が弱っており、小腸内で栄養素を十分に吸収できていない場合、または大腸内での脱水が十分にできずに排出されてしまった場合などが考えられます。

また、固くコロっとした糞便は、大腸の動きが悪く、腸内に便が長く留まることで、過剰に水分を吸収してしまっていることが原因です。善玉菌の役割の一つで、大腸の動きを促進する役割があるので、それらが少なくなっている可能性もあります。

・便を検査
より詳しく検査をしたい方には、便を採取し検査にかける方法もあります。
検査できる項目は様々で、腸内細菌のバランスだけでなく、腸内年齢や、必要な栄養素を教えてくれるものもあります。
検査は8,000〜20,000円くらいまでが相場となっており、動物病院で受けられるケースもありますが、飼い主様自身が自宅で採取し検査機関に送るキットが主流となっています。
おおよそ検体提出から、2週間から、長くて6週間ほどで結果が分かります。

腸内環境を整えるには

腸内環境をいい状態にするためには、食生活とストレスを溜めないことが最も重要です。

・食生活
乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスや、そのエサとなるオリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクスを多く含んだ食事を摂ることが重要です。
最近では、それらを多く含んでいるドッグフードも販売されています。

もし食物アレルギー等でフードの変更が難しい方は、サプリメントで栄養を補充することをお勧めします。

・ストレス
ストレスは悪玉菌を増幅させることが研究で分かっています。どんなにいい食生活を心がけても、散歩の時間が足りない、スキンシップ不足などでストレスを溜め込むと、精神的なだけでなく腸内環境にもよくありません。
適切な散歩の時間やおもちゃでの遊び、撫でる・褒めるなどしてストレスを発散してあげましょう。

まとめ 

腸内環境は、食生活だけでなく、日々のストレスや加齢でも変化していきますので、一度検査したから終わり、というものではなく、継続的にケアをしていくことが重要です。
犬は自分で食べるものを選べません。飼い主様が気を使ってあげることで、今よりもっと元気で健康的になるかもしれません。
日々愛犬の状況を観察しながら、必要なサポートをしてあげたいですね。

参考にした記事・文献

AMERICAN KENNEL CLUB
Probiotics for Dogs
https://www.akc.org/expert-advice/nutrition/probiotics-for-dogs/

アニコム損害保険株式会社 PRTIMES
犬の腸内環境が多様なほど、健康度が高いことが明らかに!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000079.000028421.html

イヌ・ネコにおけるプロバイオティクスについて
深田恒夫、柴田早苗
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/21/3/21_158/_pdf/-char/ja

犬や猫における腸内細菌叢と消化器疾患
五十嵐寛高
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/21/3/21_145/_pdf/-char/ja

ヤクルト中央研究所
健腸長寿②:健康の要、「腸」
https://cutt.ly/HwimH9R1

ROYAL CANAN
ワンちゃん・ネコちゃんの健康を腸から整えよう!①腸内細菌と「ディスバイオシス」
https://www.royalcanin.co.jp/dictionary/column/230405

一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会
発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会
乳酸菌について知る
https://www.nyusankin.or.jp/lactic/probiotics/

Butch
ワンちゃんにも腸活?腸内環境を整える方法とは
https://www.butch-japan.jp/archives/pecola/intestinal-environment-for-dogs

Vepta
腸内フローラ検査
https://www.veqta.jp/service/flora/

アースペット株式会社
【獣医師監修】今日から始めたいペットの「腸活」
https://cutt.ly/1wimLdwV