愛犬のお世話の中で、意外と頭を悩ませる『爪切り』
嫌がる子も多く、一度は頭を悩ませた飼い主様も多いのではないでしょうか。
今回は、最近犬を飼い始めた方だけではなく、飼育歴の長い飼い主様も、意外と知っているようで知らなかった爪切りの重要性について、改めて解説をしていきます。
犬の爪の構造、役割について
犬の爪は、人間のようにまっすぐ伸びず、鉤爪(かぎづめ)のように地面に向かって弧を描きながら伸びています。
これは、地面をしっかりと捉えて、瞬間的に力強く走り出すための役割があると考えられています。
そして人間の爪と最も異なる点としては、犬の爪は伸びれば伸びるほど、血管や神経も一緒に伸びてしまう、ということです。
そのため、ケアをせずに伸ばしっぱなしにしていると、いざ爪を切る際に、一緒に伸びた血管や神経も切ることになってしまう可能性があるため、激しい痛みが伴います。
その他にも身体の不調を呼び起こす原因にもなってしまうため、愛犬の健康を守るために必要なケアの一つと言えます。
爪を切らないとどうなるのか
先ほどあげた事例の他にも、爪が長いことで起こる様々な健康影響があります。
・ 爪の巻き爪
爪が長く伸びすぎると、爪が曲がり、周囲の皮膚に食い込んでしまうことがあります。これにより、不安定さや痛みを引き起こすだけでなく、炎症や、傷口から感染症にかかる可能性もあります。
犬は痛みを感じて歩行が困難になり、爪周辺の腫れや赤みが現れることがあります。
・ 歩行異常や関節炎
本来犬の爪は、体重を支える構造にはなっていません。適切な爪の長さを維持しないことで、爪が地面に引っかかったり、不正な着地が生じる可能性があります。これにより、歩行異常や足関節の負担増加が引き起こされることがあります。長期的には、関節炎や骨の変形が進行する可能性があります。
・爪の割れや破損
適切な長さを維持しない爪は、不自然な形状を取ることがあります。その結果、爪が割れたり破損したりすることがあります。先ほど話したように、爪には血管と神経が通っているため、痛みを引き起こしますし出血もします。また、その傷口から感染症にかかるリスクも高まります。
・ 爪球炎
爪の長さが適切でないと、爪球炎と呼ばれる、犬の指や肉球の間に炎症が発生する可能性があります。悪化すると血や膿がコブ状のように腫れ上がり、治療が必要となる場合があります。
犬が舐めたり噛んだりしてしまうケースも多く、慢性化し治りにくくなってしまうこともあるため、事前のケアが重要となってきます。
犬の爪切りの頻度とタイミング
愛犬の爪を切る頻度は一般的に、約1か月に1〜2回の頻度で行うことが推奨されますが、個体や年齢、生活スタイルによってその頻度は異なります。
例えば、散歩の頻度が多い場合、爪が地面の石やアスファルトによって摩耗するため、月に1回程度で十分です。
一方で、室内で過ごす時間が多い犬は摩耗機会が少ないため2回程度が好ましいです。
また年齢別に見ると、パピー期は最も身体が成長する期間なため、その分伸びるスピードも早く、成犬時と比べても頻度は増える傾向にあります。
伸びてきていると判断するタイミングの一つとして、室内犬の場合、普段床を歩いても音がしない犬が、歩くとフローリングに爪が引っかかるようなカリカリ音が鳴り出したら、爪が伸び過ぎているサインですので、メンテナンスを行いましょう。
自宅で愛犬の爪を切る方法
爪を定期的に切る必要性は認識できたかと思いますが、実際に自宅でセルフカットはできるのでしょうか。
結論、セルフカットは可能です。ただし、以下に注意を払いながら行いましょう。
・1度に切り過ぎない
前述の通り、爪には神経と血管が通っています。一度に切りすぎると、それらも傷つけてしまう可能性があります。爪をよく見ると、内側にピンクがかった血管が見えると思います。そこに注意を払いながら、少しずつ切ってください。切り方のコツは以下の図のように行うといいでしょう。
・愛犬を落ち着かせる
愛犬が落ち着かず動き回ってしまうと、爪を切るどころか怪我をさせてしまう可能性があります。
普段、安心しているような場所を選び、リラックスした状態で爪切り作業に取り組めるようにしましょう。
また爪切りは、動かないように身体を保定する人と、爪を切る人で役割を分ける人の2人がかりで行うのが理想的です。
保定の仕方に決まりはありませんので、愛犬が動きづらく、でも安心できるような形で保定しましょう。
もし一人で行う際に、愛犬が大人しくしてくれるか不安な方は、ハンモックのような犬を固定する補助道具もありますので、活用してみてもいいかもしれません。
・必要道具をきちんと準備する
わんちゃんの爪は弧を描いているため、人間用の爪切りではカットが困難です。安全に切れるよう専用の道具を準備しましょう。
①爪切り
爪切りは、初心者でも扱いやすい『ニッパータイプ』と、切れ味のいい『ギロチンタイプ』小型犬などにおすすめの『ハサミタイプ』の3種類があります。
それぞれ特徴はありますが、一番は飼い主様が使いやすいと感じたものが大事です。愛犬と飼い主様にあった道具を選びましょう。
②爪やすり
爪やすりは、爪を切った後に爪の形を整えるために使用します。爪の鋭利な部分やガサガサした部分をやすりで滑らかに整えることで、愛犬が快適に歩行できるようになります。昨今は電動のものも種類が豊富なため、予算や使い勝手を考え選択されるといいでしょう。
③止血剤
爪を切る際には、爪が誤って深く切られてしまうことがあります。そのような場合には、止血剤を使用して出血を止めることができます。止血剤は、爪の出血を素早く止める効果があり、パウダータイプやスティックタイプなどがあります。
プロにお任せする選択肢
自宅でできる爪の切り方についてこれまで述べましたが、愛犬が中々落ち着かない、怪我をさせないか不安など、自身での爪切りが難しい場合は、トリミングサロンや動物病院に頼むのも一つの方法です。料金も500〜1000円程度が相場なため、比較的お手頃なのではないでしょうか。
まとめ
爪切りを怠ると、愛犬の健康維持だけではなく、大好きなお散歩や遊びが楽しくなくなってしまう原因にもなりかねません。
人間のように自分でカットができないからこそ、定期的なメンテナンスをしてあげ、愛犬が幸せに過ごせるようにサポートしてあげましょう。
参考にした記事・文献
AMERICAN KENNEL CLUB
How to Trim Your Dog’s Nails Safely
https://www.akc.org/expert-advice/health/how-to-trim-dogs-nails-safely/
AMERICAN KENNEL CLUB
What Are Dog Dewclaws?
https://www.akc.org/expert-advice/health/what-are-dog-dewclaws/