犬は “赤色” が見えていない?犬と人間の見え方の違いを解説

愛犬が普段どのように見えているか、気になったことはありませんか?
ドッグランで愛犬が飼い主様を間違えてしまった。おもちゃのボールで遊んでいたが、急に見つけられなくなってしまった。

それらの原因は、犬の視力と色の識別力が関係しているかもしれません。
犬と人間では物の見え方にどのような差があるのか、説明していきます。

犬の視力は悪い!その理由を解説

犬の視力自体は、実はあまり良くありません。人間の視力でいう0.2〜0.3程度しか見えていません。
一方で動体視力はかなり高く、人間の4倍以上もあると言われております。

実は、犬と人間の目の構造自体はとても酷似しています。
では、なぜこのような特徴の違いがあるのでしょうか。

その説明をする前に、人間や犬は、目を通じてどのようにして“見る”ことができているか、ご存知でしょうか。

目は、よく“カメラ”の仕組みと似ていると言われます。

〈カメラで例える、目の役割〉
水晶体(すいしょうたい):レンズ
角膜(かくまく):フィルター
毛様体(もうようたい):ピント調整
虹彩(こうさい):絞り機能
瞼(まぶた):シャッター
硝子体(しょうしたい):内部・暗箱
網膜(もうまく):得られた情報を認識するフィルム

普段何気なく見えている景色は、目が様々な役割の元、モノを的確に捉えるよう調整しているのです。

そして前述の通り、人間も犬も目の構造自体はほぼ同じですが、異なる環境下で歩んできたことから、各機能の発達度は異なってきます。

例えば、犬の水晶体は、人間の2倍程度の厚さがあります。
これは、暗闇の中でも少ない光を吸収しようとしているためとも言われており、野生時代の名残です。
そして水晶体に厚みがあると、本来であれば、近い距離を見ることが得意です。

カメラのレンズもレンズの厚みが大きいほど、被写体が近いものを綺麗に撮れますよね。
しかし犬の場合は、ピントを合わせるための毛様体の働きが人間よりも弱いため、上手くピントが合わず、ぼやけて見えてしまうのです。

一方で、動体視力が高いのは、目を支えている外眼筋(がいがんきん)という筋肉が発達しているからだと言われております。
そもそも動体視力とは、その名の通り『動くものを見る力』です。
つまりは動いたものを追うために、目をどれだけ速く大きく動かせるかが重要となり、眼球を動かす外眼筋がその役割を担っているのです。
これらも、野生化時代の狩猟を中心とした生活スタイルの名残りだと言われております。

人間のように、視力が悪かったとしても、眼鏡やコンタクトレンズを使用できるわけではないので、
ここまで視力が悪いと日常生活に支障はないのか、不安になられる飼い主様も多いかと思います。
しかし犬は人間ほど視覚に頼ってはいません。

人間は情報の80%を視覚に頼っているのに対し、犬は嗅覚40%、聴覚30%、視覚20%程度と、嗅覚と聴覚が高い割合を占めていると言われています。なので視力に頼り切らずとも、日常生活を過ごすことができるのですね。

犬は何色が見えている?

もう一つ大きく異なる特徴として、犬と人間は、視えている色が人間と異なります。
これは、色を認識する錐体視細胞(すいたいしさいぼう)という細胞の種類が、人間は3種類なのに対し、犬は2種類しか持っていないからです。

そもそも色というのは“光の波長”です。
光を受けた物体は、物体に吸収されるものと反射するものに分散されます。
その反射された光を、その物体の色として認識します。

例えばトマトが赤く見えるのも、トマトを反射した光が赤色を認識する波長だったため、その情報を受け取り、赤い、と分かります。
そして光の三原色と言われる、”赤” “緑” “青” の光を、3種類の錐体視細胞がそれぞれ感受し、それらの光が重なり合うことで、多様な色を認識できます。

しかし犬は、冒頭でも記載した通り、錐体視細胞の数が2種類のため、以下の図のように黄色と青色のみしか認識できません。
そのため、人間が赤色や緑色に見えている色は、犬はくすんだ黄色として識別します。

見つけやすいようにと買った赤色のおもちゃは、犬にとってはむしろ認識しづらい、ということもあります。
日々使用しているおもちゃや道具が、本当に犬にとって認識しやすい色なのか、今一度見直してもいいかもしれませんね。

まとめ


犬の視力や物の見え方は、人間と大きく異なります。
普段の何気ない行動や選択が、犬にとって過ごしづらい環境となっている可能性もあります。
人間ほど視覚情報に頼りきってはいないといえ、どのようにして景色が見えているのか、飼い主様自身が把握をしてあげることで、今よりもっと快適に過ごせるかも知れませんね。

参考にした記事・文献

AMERICAN KENNEL CLUB
Can Dogs See Color?
https://www.akc.org/expert-advice/lifestyle/can-dogs-see-in-the-dark/

Can Dogs See in the Dark?
https://www.akc.org/expert-advice/lifestyle/can-dogs-see-in-the-dark/

ボシュロム オンライン サービス&サポートBausch + Lomb
ものが見えるしくみと目の構造
https://support.bausch.co.jp/vision/structure1.html#

キヤノンサイエンスラボ・キッズ 光のなぞ
https://global.canon/ja/technology/kids/mystery/m_04_15.html

テクノ・シナジー
構造色とは: 1. 物質固有の色
http://www.techno-synergy.co.jp/opt_lectures/about_SColor01.html

Dog eye
株式会社404
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000087403.html

株式会社 秀潤社
細胞学 色覚の多様性と色覚バリアフリーのプレゼンテーション
https://www.nig.ac.jp/color/barrierfree/barrierfree1-2.html