致死率25%の病気の原因はダニだった?寄生虫から愛犬を守ろう

みなさまは愛犬のノミ・ダニ寄生の予防は行っておりますでしょうか。 愛犬が、かゆがってる素振りを頻繁にしている、観察していると愛犬の身体を飛び回っている虫が見えた、皮膚が荒れている、などの症状があった場合、それはノミやダニに寄生されているかもしれません。
ノミやダニは生息域が広く、また症状も軽度なものだと見分けがつきにくいため、気付かぬ内に進行、または合併症を併発し、治療も長期化するケースもあります。

今回は、ノミやダニとはどんな生き物なのか、寄生された場合の症状、またその予防方法までお伝えできればと思います。

ノミとは?ダニとの違いは?気を付けるべき種類や時期も解説

ノミ


体長約2〜2.5mm程度の害虫であり、世界には2,200種以上のノミがいますが、犬によく寄生するノミは『ネコノミ』という種類となります。
このネコノミは、名前の通りネコに寄生しますが、実は人間や犬にも寄生し吸血をしますので注意が必要です。
ノミの最大の特徴は跳躍力にあり、体長の200倍もの高さを飛び跳ねています。そのため、寄生しているかどうかは目視で判断できるケースもあります。

春から秋にかけてが繁殖シーズンとなり、特に気温20〜30℃が最も繁殖サイクルが活発になり大量発生しやすくなります。
屋外だけでなく、屋内にも潜んでおり、部屋の四すみ、家具の下やすき間などの暗く湿ったところ、カーペット、ソファーやベッドの上など、家の至る所が生息範囲です。屋内への進入経路は様々ですが、お散歩中に犬や飼い主に寄生した、購入したカーペット等に棲みついていたなどが挙げられます。

ダニ


ノミと間違えられることもよくありますが、実はクモやサソリの仲間です。繁殖シーズンや繁殖環境、生息域も類似しています。
ダニで特に注意が必要な種類は『マダニ』です。山林や川原の土手などの草むらエリアを特に好む、屋外に生息している大型のダニですが、マダニは感染症を保持しており、それらに発症すると最悪の場合死にいたる恐ろしい病に発展します。

このように居住している家の中や、普段の散歩エリアなど、生活圏内にかなり近いところにノミやダニは潜んでいます。

ノミやダニに関連する病気

ノミやダニの生態については述べましたが、実際に寄生され噛まれると、愛犬にどのような健康被害が生じるのでしょうか。

ノミの場合
・ノミアレルギー性皮膚炎 
ノミに噛まれる事で生じるアレルギー疾患であり、最も多い症例です。
 ・咬まれた場所を超えて広がる強い皮膚刺激と痒み 
 ・脱毛 
 ・皮膚感染症
これらの症状が見られたら、感染している可能性があります。一般的には、痒み止めなどの内服薬と共にノミの駆除/予防薬を塗布し、治療を行います。

・瓜実条虫症 
ノミに咬まれることによって刺激された皮膚を噛んでいるときや、毛づくろいで被毛を舐めているときにノミを飲み込むことがあります。もしそのノミが瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ)という寄生
虫に感染していた場合、その寄生虫は、寄生先をノミを飲み込んだ動物に移します。その寄生虫は体内に寄生をします。
基本的には無自覚無症状であまり害はないとされていますが、多数の瓜実条虫を飲み込むと、食欲不振、下痢、元気消失がみられるようになります。
一般的には専用の駆逐薬を投与することで治る病となります。

・貧血  
ノミは繁殖力が特に高く、犬にノミが1匹寄生すると、すぐに数百匹に増えてしまいます。大量のノミに咬まれて吸血された犬は、赤血球数が低下し、貧血を起こすことがあります。
貧血の症状には脱力、倦怠感、呼吸促迫などがあり、ノミを駆除しなければ最悪命を落とす可能性もありますので、注意が必要です。

ダニ(マダニ)の場合
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
発症すると犬は25%、人間では30%の致死率とも言われている恐ろしい病です。
マダニ体内に生息しているウイルスが、噛まれる事で体内に入り感染します。症状は食欲低下、発熱、嘔吐、白血球や血小板の減少などがあります。
山や森に入った後、急激に体調を崩したなどの傾向が見られた場合はすぐに疑った方がいいです。
更にこの病の恐ろしいところは、愛犬から人間に感染が移るとされており、また現在の医学において有効な治療方法は確立されていないため、飼い主様自身の命が脅かされる恐れもあるため、特に注意してください。

・ライム病
マダニを介してボレリアという細菌に感染する病気です。発症した場合よく見られる症状として、関節炎が挙げられます。関節が腫れているなどの症状があった場合はライム病の可能性もあります。

・バベシア病
マダニを介し、バベシアという赤血球に寄生する寄生虫に侵され、赤血球が壊され、貧血が起こる病気です。中には感染をしていても症状が発症しないケースもあるようですが、一度感染すると体内からの完全除去が困難な病気です。
貧血が進むと肝機能障害が起こり、感染をおこした犬は、食欲不振の状態が続きます。他にも嘔吐や血尿などの症状が報告されており、合併症を発症する可能性もあります。
投薬治療が主となりますが、重症化すると致死率が10〜20%ある恐ろしい病気でもあるので、症状を見逃さないようにしましょう。

予防の方法はあるのか

ここまでノミやダニにまつわる病気について述べましたが、事前に防ぐ手立てはあるのでしょうか。
予防の方法についてお伝えします。

・ノミダニ駆除/予防薬
こちらは予防だけでなく、実際に寄生されている場合でも、対象を駆除し、製品によっては繁殖/再寄生をも防ぐ効果が持続するものもあります。
タイプとしては、皮膚に直接塗布するタイプから、フード型の内服薬まで様々な種類があります。各製品によって効果の持続期間が1ヶ月に一回のものから、3ヶ月に一回で済むものまであるため、予算や愛犬の体調、症状、好みや性格に合わせて選択しましょう。

・部屋を清潔に保つ
マダニ以外のノミやダニの多くは室内で寄生することが多いです。ほこりやフケなどを特に好むため、定期的な掃除や換気、布団やカーペットは日向干しをさせるなどして予防しましょう。
他にも、家具などに使用する予防スプレーなども販売されているので、ぜひ活用してみてください。

・家中に繁殖しているなら、スモークタイプも選択肢の一つに
ノミやダニが室内のあらゆるところで繁殖している可能性があるなら、スモークタイプの製品も選択肢の一つに入れてみるのも良いかもしれません。最大のメリットは広範囲での駆除ができることです。一方で、そのスモークの煙は、人間や愛犬の健康を害する可能性があるため、一度炊きはじめると、12〜24時間は室内に戻れない、というデメリットもあります。

・草むらに行かない
散歩中や旅行中など、好奇心旺盛な愛犬は探究のつもりで草むらに近付くことがあるかもしれません。ですが、むやみに近づけさせないことが、ノミダニ寄生を予防する上では重要です。
特に森や草が生い茂っているエリアはマダニが好む場所ですので、注意が必要です。もし自然の中に行く予定があるのであれば、事前に予防薬を摂取しておきましょう。

まとめ

身近に潜んでいるノミやダニに寄生されると、様々な病気にかかる可能性があり、場合によっては愛犬の命に関わるケースもあります。
フィラリア予防や混合ワクチンの接種率は70%を上回る中、ノミやダニの予防接種率は59%と下回っており、その必要性に対する認知度が低い現状も見受けられます。
ノミダニの予防接種は任意なため、全ての犬にとって必要なものではないかもしれませんが、今回ご紹介した感染理由や症状に該当しそうなことがあれば、病院相談のもと、予防や駆除を行ってみてはいかがでしょうか。

参考にした記事・文献

AMERICAN KENNEL CLUB
11 Flea & Tick Prevention Tips
https://www.akc.org/expert-advice/health/flea-and-tick-prevention-tips/

AMERICAN KENNEL CLUB
What Do Flea Bites Look Like on Dogs?
https://www.akc.org/expert-advice/health/flea-bites-on-dogs/

Elanco 
犬によくある4つのノミ関連の病気
https://mypetandi.elanco.com/jp/parasites/fleas/flea-diseases-in-dogs
駆除薬投与後、ノミが死滅するまでにどれくらいの時間がかかりますか
https://mypetandi.elanco.com/jp/parasites/fleas/how-long-does-it-take-fleas-die-after-treatment
犬からマダニを除去する方法—正しいやり方
https://mypetandi.elanco.com/jp/dog-education/how-to-remove-a-tick-from-a-dog

アース製薬 ノミを知る
https://mypetandi.elanco.com/jp/parasites/fleas/flea-diseases-in-dogs

アース製薬 ダニを知る
https://www.earth.jp/gaichu/knowledge/dani/

讀賣新聞オンライン
全国で死亡相次ぐ「マダニ感染症」、犬2頭が発症…特効薬なく注意呼びかけ
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220603-OYT1T50229/

SBIいきいき少額保険 ワンハッピーにゃんハッピー
【獣医師監修】犬のノミ対処方法とは?防止・駆除方法やダニとの違いも解説
https://www.i-sedai.com/pet/column/dog/D0103.html

NIID 国立感染症研究所
SFTS発症動物について(ネコ, イヌを中心に)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2467-iasr/related-articles/related-articles-473/8988-473r06.html

一般社団法人 日本ペットフード協会
令和4年 全国犬猫飼育実態調査
https://petfood.or.jp/data/chart2022/index.html