愛犬の早食い、これって大丈夫?その原因とリスク、対策について徹底解説

ごはんをあげたばかりなのに、とてつもないスピードで完食していた。
食べている様子を観察していると、噛んでいる様子は一切なく、まるで飲み込んでいるようだった。
早食いをし過ぎていて、ご飯中によく咽せている。このような光景を一度は目にしたことはありませんか?

多くの飼い主様が気にかけている、犬の早食い問題。実は、場合によっては命をも脅かす重大な事故に発展する恐れもあります。
今回は、犬はなぜ早食いをしてしまうのか、早食いで起こるリスク、そしてそれを止める術はあるのか。これらについて説明をしていきます。

なぜ早食いをしてしまうのか

なぜ犬は早食いをしてしまうのでしょうか。3つの観点から解説をします。

・歯の構造

犬の歯は、以下のように4種類に分かれています。
切歯は人間で言う前歯の位置で、食べ物を噛み切り口の中へ取り込む役割があります。
鋭く尖った最も長い犬歯は、食べ物に食いついて切り裂くために使われます。
そして烈肉歯は、犬歯で切り裂き口の中に入った食べ物を、かみ砕き飲み込めるように切断する機能を持ちます。

見るとわかるように、どの歯も尖った構造をしており、人間のようにすり潰すような歯の構造ではありません。
切歯や犬歯を使い『噛み切る』という行為は得意なものの、ドライフードのような小さな餌はほとんど噛まずに飲み込んでしまうのです。

・本能的
犬の祖先であるオオカミは、群れで行動し、狩りでの食料調達が主でした。いつ食事にありつけるか、そして食事中もいつ外敵に襲われるかもわからない環境だったからこそ、速く食べることが必要不可欠でした。この本能が、現在の犬の早食いにつながっているのではないかと考えられています。

・犬は満腹中枢が鈍い
犬は満腹中枢が人間よりも鈍いと言われています。満腹であることに気付きにくく、食べ物がある限り食べ続ける傾向があります。

早食いの危険性


ただの早食いと思うかもしれませんが、実は命を落とす可能性もある危険な行為だと言うことをご存知ですか?
早食いが起こす危険な病気、疾患についてご紹介します。

胃拡張捻転(いかくちょうねんてん)
聞き馴染みの少ない症状かもしれませんが、胃拡張捻転は愛犬の命にも関わるとても危険な病気です。
早食い時に、ご飯と一緒に空気も吸い込んでしまうことで、急速に胃が拡張されます。その状態で、何かしらの原因(急激な運動や強いストレスなど)で胃が捻転し、周りの臓器が圧迫されたり、他の臓器や血管などが胃と共に捻転し、血液の循環を妨げてしまいます。早めに処置(手術)をしなければ、高確率で命を落としてしまう恐ろしい疾患です。

・誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
早食いをすると、食物が食道ではなく気管に入り込んでしまう症状を誤嚥(ごえん)といい、食物内に入っていた細菌などから炎症を起こし、誤嚥性肺炎へと繋がります。
発熱や普段と呼吸音が違う、息苦しそうなどの症状がある場合は、誤嚥性肺炎を疑いましょう。

・窒息
早食いをしていると、食べ物を喉につまらせ、窒息してしまうこともあります。
喉に詰まらせると、犬はむせて咳をし、何とか吐き出そうとします。
それでも吐き出せないと、犬はさらに口や頭を前足で必死で掻く仕草をし、さらに窒息状態が続いてしまうと、気絶してしまいます。
この状態はかなり危険で命に関わる状態です。そして一刻を争います。
窒息時の応急処置の記事はこちらに詳しい内容を記載しているので確認してみてください。

早食いを防止するには?


犬の早食いは、本能によるものも大きいため、トレーニングなどでの根本改善が中々難しいと言われています。
ですので、我々飼い主自身が工夫をすることで、それらを解消できることもあります。

・餌をふやかす
餌をふやかし水分量を増やすことで、柔らかく食べやすくなるだけでなく、消化の助けとなります。
ふやかす際の温度が高すぎると、栄養素が失われる恐れがあるので、ぬるま湯くらいで行うのが丁度いいです。

・食事回数を増やす
一度に食べる量を減らし分散することで、消化の手助けや窒息の恐れも少なくなります。
ただし1日に与える餌の総量を変えてしまうと、栄養不足や過食に繋がるので注意が必要です。

・食事環境を変える
犬は本能的に餌を取られぬよう、早食いをしてしまう、と言うのは第一項で記載しましたが、もしかしたら今食事をしている場所や環境も、そう思わせている可能性があります。

例えば、多頭飼いであれば、餌を与える場所を各々変更してみる。一頭飼いでも、リビングの真ん中でご飯を与えているのであれば、もしかしたら犬にとってはプレッシャーになっている場合もあります。
落ち着いてゆっくり食べれる環境を用意することで改善する場合もあります。

・食器を変える
突起があるものや、底が丸く揺れる食器など、フードが食べづらい構造になっている食器がございます。結果として食べるのに時間がかかり早食いを防止できるわけです。

まとめ

犬の早食いは、本能によるものも大きく、根本改善を行うのは難しい問題です。
場合によっては、命につながる重大な事故になりかねるので、たかが早食い、と思わずに、飼い主様自身が工夫をしてあげることで、食べるスピードをコントロールしてあげることが大切です。

参考にした記事・文献

AMERICAN KENNEL CLUB
How to Make Your Dog Eat More Slowly
https://www.akc.org/expert-advice/advice/4-ways-to-slow-your-dogs-eating/

Hill’S
ペットが喉にものを詰まらせたときの対処法
https://www.hills.co.jp/dog-care/healthcare/how-to-help-a-choking-dog

ダクタリ動物病院
胃拡張胃捻転症候群(GDV)
https://cutt.ly/Pwi4JWVH

犬・猫のペット保険ならFPC
誤嚥性(吸引性)肺炎
https://cutt.ly/4wi4K1Tg