新しい家族として犬を迎えるとき、ペットショップやブリーダーからの購入だけでなく、「里親制度」を通じ、保護犬のお迎えを検討する方が増えてきています。
しかし犬の里親になるのは、普通にペットとして購入するのとはまったく手順が異なり、様々な条件や準備が必要となってきます。
本記事では、里親制度の概要から、保護犬を迎えるメリットやデメリット、お迎えの流れまでを詳しく解説します。
目次
1. 里親制度とは何か
里親制度とは、飼い主が何らかの事情で飼育を続けられなくなったペットや、保健所や動物愛護団体で保護された犬や猫を、新しい家族として迎え入れる仕組みのことです。
近年、ペットショップで購入する代わりに、行き場を失った犬たちを里親として迎え入れる飼い主が増えてきました。
里親制度は、本来飼い主の無責任な飼育放棄や、繁殖目的で使用された後に放棄された個体を減らすことを目的としています。
特に保健所で保護された犬は、新しい飼い主が見つからない場合殺処分されることがあるため、命を救う観点でも重要な取り組みなのです。
それだけではなく、飼い主側にとってもペットを購入する際の高額な生体価格を負担しなくても良いことや、成犬や成猫の場合は性格や体格がすでに確立しているため、予測しやすいというメリットがあります。
一方で、ペットの終生飼育を誓うことや、適切な居住環境を提供できることなど、保健所や保護団体が定めたいくつかの条件を満たす必要があり、また多くの保護団体では、避妊・去勢手術を義務付けるなど、繁殖を防ぐための対策も重要視しています。
2. 保護犬の里親になるメリット
保護犬の里親になることで得られるメリットは多くあります。
まず第一に、命を救うことができるという点です。 保護された犬の多くは、もし新しい飼い主が見つからなければ、最終的には殺処分される運命にあります。
日本では動物愛護の取り組みが進んでおりその個体数は年々減少しているものの、それでもなお年間44,000頭近くが殺処分されており、依然として多くの犬が行き場を失っています。
保護犬を迎えることで、一つの命を救い、安心して過ごせる環境を作ってあげることができます。
次に、成犬を引き取る場合、すでに性格や体格が決まっていることも特徴の一つです。
子犬を迎える場合、将来どれくらい大きくなるかや、どんな性格になるかは育ててみないとわからない部分がありますが、成犬ならその心配はありません。
さらに、保護犬を迎える際にはペットショップでの購入に比べて初期費用が少ない点も魅力です。
通常、保護団体に支払う譲渡費用には、ワクチン接種や健康チェックの費用が含まれていますが、生体価格は含まれていないことが多く、費用面でも負担を抑えて犬を迎え入れることができます。
3. 保護犬の里親になるデメリットと注意点
一方で、保護犬を迎える際にはいくつかのデメリットや注意点もあります。
保護犬の中には、過去に虐待を受けたり、長期間にわたって放置されていた犬がいます。こういった犬は、人間に対して不信感を抱いていたり、新しい環境に馴染むまでに時間がかかることがあるため、そのため、飼い主には十分な時間と忍耐が求められます。
また、保護犬の多くは成犬やシニア犬であり、既に持病を抱えている場合もあります。
関節の問題や心臓疾患などは、長期的にケアが必要なこともあり、その分医療費がかさむことも考慮する必要があります。
特にシニア犬を引き取る場合は、共に過ごせる時間が限られていることを理解した上で、最後まで責任を持って世話をする覚悟が求められます。
さらに、保護犬を迎える際は、迎え入れる家族全員が同じ方針であることが非常に大切です。
犬を迎えることは、家族全体での責任であり、犬が安心して暮らせる環境を整えるためには家族の協力が不可欠です。保護犬が新しい家族に慣れるには時間がかかることも多いため、その過程を支える準備が整っているかをよく確認しましょう。
4. 保護犬の里親になるための条件
保護犬の里親になるためには、保護団体が定めたいくつかの条件をクリアする必要があります。
そもそも何故条件が定められているかというと、一番に犬を迎え入れた後も責任を持って飼い続けられるかどうかを確認するためです。
そのために、以下のような点が条件としてチェックされることがあります。
安定した収入
ペットを受け入れられるほどの安定した収入があるかどうか、ご家庭の経済状況を確認されることがあります。
飼育可能な住宅に住んでいること
持ち家か、または賃貸でも犬が飼育可能な物件なのか、など犬を飼育できる環境であるかをチェックされることがあります。
犬の飼育経験があること
過去の経験から、しつけや人慣れ、犬慣れに時間がかかる子が多く、犬の飼育経験が条件に含まれることもあります。
受け入れ家族の同意
きちんと家族全員が保護犬の受け入れに同意をしているかなど、家庭内の意思決定なども対象となる場合があります。
避妊・去勢手術の対応
予期せぬ繁殖で飼育ができなくなり愛犬を手放す決断する飼い主が、残念ながらいる事実があります。そのため、不要な繁殖を防ぐための避妊・去勢手術の対応が求められる場合があります。
これらの条件に加え、保護団体によっては、里親希望者の生活環境をチェックする家庭訪問が行われることがあります。これは、犬が安全に快適に暮らせる環境が整っているかを確認するためであります。
また、里親としての適性を判断するための面談が行われることもあります。
このようなプロセスを通じて、犬が新しい環境で幸せに暮らせるかの判断がなされます。
詳しい条件は、保護団体によって定めている内容が異なるため、お問い合わせください。
5. 保護犬を引き取るまでの流れ
保護犬を引き取るまでのプロセスは、保護団体や保健所によって多少異なりますが、一般的な流れとしては以下の通りです。
まず、インターネットの里親募集サイトや譲渡会などで保護犬を探し、気になる犬が見つかったら申し込みを行います。その後、保護団体との面談があり、犬の性格や健康状態について説明を受けます。
次に「マッチング」と呼ばれるプロセスが行われます。これは、犬と里親候補者が実際に対面し、相性を見るためのものです。
犬との相性が良いと判断されれば、次に家庭訪問が行われ、飼育環境が適切かどうかが確認されます。ここで問題がなければ、トライアル期間が設定され、通常1〜2週間程度、犬と一緒に過ごし、実際に飼育できるかどうかを見極めます。
トライアルが成功すれば、最終的な譲渡が行われ、正式に保護犬を家族として迎えることができます。このプロセス全体を通じて、犬との相性を慎重に確認し、長期的に共に暮らす準備を整えることが大切です。
6. 保護犬の新しい家での生活
新しい家に来た保護犬は、最初の数週間がとても重要な時期です。
環境の変化に敏感な犬にとって、新しい家族や生活習慣に慣れるまでには時間がかかることがあります。そのため、犬がリラックスできるスペースを用意し、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
まずは、犬が一人で落ち着ける場所を確保しましょう。ケージやクレートを使い、犬がストレスを感じたときに安心して過ごせる場所を作ることが有効です。また、家族との時間を大切にし、遊びや散歩を通じてコミュニケーションを図りましょう。これにより、犬は新しい家族との信頼関係を築き、安心して暮らせるようになります。
トレーニングも重要な要素です。保護犬の中には基本的なしつけがされている犬もいますが、新しい環境に適応するために再びトレーニングが必要なこともあります。優しく根気強く教えながら、新しい家族としての絆を深めていきましょう。
まとめ
里親になるためには、ペットの終生飼育や適切な居住環境の提供といった、保護団体等が定めた条件を満たす必要があり、譲渡できるかどうか判断されます。
責任を持って迎え入れるためには、家族内での同意や避妊・去勢手術やワクチン接種も含めた費用面もしっかりと確認をしましょう。
制度や仕組みをよく理解し、新たな家族との素敵な出会いとなることを願っています。
参考にした記事・文献
東京都動物愛護相談センター ワンニャン東京
譲渡ってなに?
https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/whats-jyoto/
東京都動物愛護相談センターから譲渡を受けるには
https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/center-kara/#p1
環境省
譲渡で繋ごう!命のバトン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2809a/pdf/full.pdf
犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html